足りないもの (MAGL-3005)
1.足りないもの
2.しめった空が落ちたら
3.ニノウデ思案
4.だいあもんど
5.ぼっちぼん
6.ポケット、プリズム、スプライト。
<「足りないもの」に寄せて>
「足りないもの」?全然足りてるよ。自分が聴きたい音が全部入っているような気がする。
ヨシンバの得意とする「地に足が着いたカンジ」のアーシーロックはもちろんのこと、ソフトロックなA&M的な要素や繊細なフォークロックの雰囲気など…。
って小手先のことは置いといて、すごいアルバムですね、ヨシンバの中でも最高傑作だし、ここ数年の日本のロックアルバムで3本の指(もちろん個人的に)に入る名盤ですよ。なんたって曲が良い!大体、良いアルバムって言っても良い曲は前半に集中してて、後半は尻つぼみだったりするんだけど、このアルバムは違う!!後半に向けてどんどん良くなっていく。
コレはハッキリ言って商売のセオリー上、間違っている!でも、まあいいや。その潔さも込みで。
全然マニアックで終わってない!めちゃポップ!コレは本当にヤバイ!
新人ばっかり気にしてる場合じゃないよ。こんなにいいバンドがいるんだから。
「初恋の嵐」亡き後の心の隙間を埋めてくれるのは、ヨシンバだな、たぶん。
ユキタツヤ(mona records/Smily Smile)
ふとした、という時の「ふと」に「不図」という借字をあてる、ということをワタシ(43歳)は最近になって知りました。ちなみにそれは立川談志師匠の本のオビにあった「不図した病で死にたい」というフレーズだったわけですが。
そんなワタシが「不図した音楽」に吸い込まれる、という瞬間を体験しました、『足りないもの』。
ヨシンバには、なんか「階段の踊り場」みたいな、主張の弱い存在感がある。
不図した瞬間の、不図した音楽。いい意味で。
渡辺 祐(編集者&J-WAVEナビゲーター)
こんなどえらい名盤、どうしましょう。音のひとつひとつが、わたしのツボ直撃なんです。
だから、もともとたまらなく大好きな彼らの歌声やハーモニーが、よけいに色っぽさを増幅させて響くんです。
ワンフレーズごとに泣いたり、笑ったり、身もだえたり。たとえばモビー・グレープの向上心とか、フォー・フレッシュメンの洒落心とか、ニール・ヤングの哀愁とか……あたしの好きなモノが全部、ヨシンバのカルシウムになってるようなカンジ。
“足りない”ものなんか、何もない。でも、たぶん。彼らの中にはまだ“足りないもの”があって、そのキモチがこんな素敵な音楽を作っている。
足りないものを感じていない人たちの音楽は、物足りない、だろ?「足りないもの」にこそ、心ときめく。
能地祐子(ライター)